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練乳かけましょイチゴには

茶番~はじまり~

つばさ:
ねえ?春休みみんなはどこ行ってきた?

しょうた:
しょうたは山口に行って、平成ノスタルジースポットの山口井筒屋とポプラ湯田温泉店とかめ福 (※) に行ってきたよ。

つばさ:
話だしたら長くなりそうだからスルーでいいや……。
ひなたくんは?

ひなた:
オレは佐賀までいちご狩りに行ってきたぞ!

つばさ:
いちご狩り?
それならおみやげはある?ねえ?ねえ?

ひなた:
あさましいお前らがタカってくることは想定済みだからもちろんあるぞ。
ほら!

しょうた:
わーい!

つばさ:
いただきまーす!

ひなた:
おい、つばさ!ちょっと待てよ!せっかくのおいしい産地直送のさがほのかに、何白く濁った液体をかけてんだ!

しょうた:
誤解を生みそうな表現はやめてよ……。どこから出てきたのかはわからないけど、あれは練乳だよ。

ひなた:
練乳?なんてことを!
味が台無しじゃねーか!

つばさ:
え!?いちごって練乳をかけていただくモノじゃないん?

ひなた:
お前バカ舌か!?

しょうた:
まあまあ落ち着いて。
たしかにつばさの行動は非常識極まりないけれど、しょうたたち平成少年が小さい頃―21世紀初頭まではイチゴは練乳をかけて食べる果物だったんだ。

ひなた:
え、どゆこと!?

しょうた:
そうなるよね。
じゃあ、今日はイチゴの歴史について見てみようか。


(※) 現地に行ってみたら現代風のスパに建て替えられてバブリーな温泉ではなくなっていました。合掌。

原初、イチゴは酸っぱかった

甘くて可愛くてみずみずしくてみんな大好きなイチゴ。

今でこそ老若男女から人気のイチゴですが、元々は酸っぱくて甘みもない果物で好き嫌いが分かれる味でした。
昭和の終わりごろになると品種改良で福岡のとよのか、栃木の女峰という糖度の高い品種が誕生してだいぶ甘くはなったものの、酸味は残っていました。

平成前半の人々は、そんなイチゴを美味しく食そうと、酸味を抑えるために練乳をかけていちごを食べていました
いつの間にか製菓材料売場に移動したけど、スーパーでも練乳は果物売場のイチゴのひな壇の上らへんに置かれていましたね。
さらに、イチゴを練乳をよく絡めるために使うイチゴスプーンというイチゴを潰すことに特化した専用アイテムもよく使われていました。一応現代でも本来の用途に使われることはほとんどなくなったものの、介護食や離乳食用として販売は続いているようです。

プロジェクト× (ばってん) あまおう誕生秘話~イチゴ生産額日本一を取り戻せ~

イチゴの二大産地の栃木と福岡では、90年代からとよのか・女峰の問題点を改善し、さらに美味しくて育てやすいイチゴを作ろうという動きがありました。
しょうたは福岡県民なので福岡の話をしますね。

時は平成8年。福岡県農業総合試験場でとある研究が始まりました。とよのかの弱点の低温時の色付きの悪さと収穫の手間を克服し、さらに美味しいイチゴを作るための研究が。
研究者たちは4年間にわたって様々な色付きの良い品種や甘い品種を交配し、毎年約7000株の実生株を育てて、選抜を重ねました。
そして生まれたのが「福岡S6号」。現在ではあまおうとして知られている品種です。平成13年に品種登録されて栽培開始。
翌年の初出荷にあたって県民から販売用の愛称を募集し、「甘い」「丸い」「大きい」「美味い」の頭文字をとって「あまおう」と命名。平成14年の11月には県内のお子達や流通関係者を交えたお披露目会が開かれ、あまおうは華々しくデビューしました。

JA全農ふくれんは、そんなあまおうに大きな期待を寄せていました。あまおうよりひと足早く流通し始めたとちおとめによって栃木に奪われたイチゴ生産額一位の座を取り戻す期待を……。
そこで、JA全農ふくれんは、王座奪還をかけて翌年には県内のイチゴ作付面積の半分をあまおうにするという異例な規模の計画を立て、農業試験場とJAの種苗センターをフル稼働して大量の親株を用意。わずか2年で、県内のイチゴ農地の9割以上をとよのかからあまおうへに切り替えました
こうして、平成15年頃から今となっては当たり前の甘いイチゴが食卓に並ぶようになったのです。


あまおうとかが流通するようになって練乳を使わなくてよくなったのがしょうたが小学校に上がった頃だったから、今回調べるまで「小さいお子はイチゴに練乳をかける。イチゴに練乳をかけないのは大きくなった証」って勝手に勘違いしていたよ。
これってもしかしてアラサーあるあるかな?

茶番 (おしまい)

ひなた:
野菜 (※) の味も時代によって変わるんだな。

しょうた:
うん。
実は平成31年からとちおとめの後継品種の生産が始まっているし、あまおうも2025年に特許切れになるから後継を開発中と噂されているみたいだよ。

ひなた:
ってことは、今お馴染みのイチゴももう食べられなくなるかもしれないのか……。未来のイチゴも楽しみだけど、あまおうとかがなくなるのは少し寂しいな。

しょうた:
それは大丈夫だと思うっちゃね。
女峰ととよのかも、一般流通からは消えてしまったけど、酸味の強さを逆手にとってお菓子用として根強い需要が残っていて栽培は続いているし。
ニッチなところで残るんじゃない?

ひなた:
適材適所ってところか!
イチゴと一口に言っても、深いんだな……。

しょうた:
そうだよ。
美味しいものを作ろうと頑張った人たちの努力の結晶なんだから。
……ということで、食育ENDで強引にまとめるけど、みんなも食べ物への感謝を忘れないようにしようね。


公開 H36-04-12