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平成の間に増えた・減った身近な生き物たち

はじまり

つばさ:
ふあぁ~。

しょうた:
すごい大あくびだね?
夜更かして親が寝てから卵3個を1万円札で買うためにコンビニに行ってきたの?

つばさ:
違うよ。
朝早くから怪鳥の鳴き声がしゃーかしくて眠れないんだよぉ。

しょうた:
怪鳥?

つばさ:
うん。
ツバメをカラスぐらい大きくした鳥がうちの前の電線に止まって「シャッ、シャ―、キャシャ―」っち大声で叫んでるんだ。

しょうた:
……それは、怪鳥じゃなくてカササギじゃないかな?

つばさ:
カササギ!? 別名カチガラス。佐賀県の県の鳥で、サガン鳥栖のエンブレムの鳥だったり、佐賀駅の駅名標に描いてあったり、サガテレビの夕方のニュース番組の番組名の由来にもなっとるあのカササギ?
佐賀と久留米あたりにしかおらんはずなのに、なしてお(↑)れ(↓)の家 (福岡市博多区) の近所におるん!?

しょうた:
カササギに関する完璧な説明ありがとう。
それが、ここ最近カササギは生息範囲を拡大していて、福岡地方でも数を増やしているみたいなんだ。

つばさ:
へ~そうなん?

しょうた:
じゃあ、せっかくだし今日は平成の間に増えたりいなくなったりした身近ないきものたちについて振り返ってみようか!

カササギ

昭和のころまでは日本では佐賀平野と筑後平野にしか住んでない珍しい鳥でしたが、平成に入ると生息域を大きく広げ、福岡、唐津などの玄海灘側や、熊本県北・長崎県東部などでも見られるようになりました。
カササギは長い距離を飛ぶのが苦手な鳥なので、山地に阻まれてずっと佐賀・筑後平野の外に出られなかったのですが、森が切り開かれたのであちこちに飛んでいけるようになったようです。
福岡に定着したのは1990年代になってからだそうなので、時期的に筑後平野と福岡地方の間に位置する弥生が丘や三国ヶ丘の開発がカササギ拡大の契機だったのかもしれません。

また、九州外でも平成5年頃より北海道でも繁殖を始めたことが確認されています。
北海道のカササギの生息地は苫小牧から室蘭にかけての太平洋沿岸が中心。平成20年代に入ると札幌でも目撃されており、急速に生息域を広げているようです。
佐賀から広がった九州のグループとは異なり、こちらはロシアからの貨物船に紛れて入ってきた外来種という説が有力。まあ、佐賀のカササギも天然記念物として保護されているけれど、実は朝鮮出兵の時に日本に持ち込まれた外来種なんですが……。
カササギは普通のカラスのようにゴミは漁らないし、見た目も美しいのでネコちゃんと共に外来種でも存在が許されているようです。

この調子で南と北からカササギが広がっていったら、数十年後の日本人はカラスを聞くと白と黒で「シャッ」と鳴く鳥を思い浮かべているかもね。

オオタカ

生息地の森林が減少し、昭和末期に絶滅危惧種に指定されたオオタカ。
保護のために法律でオオタカ営巣地への影響がある場合は周辺の開発計画が見直されると定めらたため、平成10年代には行政・ゼネコン泣かせの鳥として恐れられていました。
オオタカは何も言わずに地下に眠っている遺跡と違ってピィピィ鳴きながら飛び回るので

「そうだ、見なかったことにしよう。」
と誤魔化すこともできず、愛・地球博やつくばエクスプレス開業時の宅地開発、圏央道など多くの国家的プロジェクトがオオタカによって計画変更を余儀なくされてきました。

そんなオオタカでしたが、平成10年代後半から個体数が回復し、平成29年には希少野生動植物の指定も解除されて実は今では絶滅の危機を脱しています。
徹底的な保護活動の効果が出た……
のではなく、鳩やカラスを餌にすることで都会の環境に適応したようです。今では明治神宮や大阪城など東京や大阪の中心部でも彼らの姿を見ることができます。
生き物って人間が思っている以上にたくましく生きてるんですね。

カラス

新世紀を迎えた東京の繁華街はゴミまみれでした。
人間の民度が今より微妙に低かったことも理由の一つですが、天敵のいない都会の環境で増えまくったカラスがゴミを荒らし回っていたためです。
しょうたが小学生の頃の生活だか社会だかの教科書にも「カラスのゴミ荒らしをなくすにはどうすればいいか?」みたいな文章があった記憶があるし、夕方のニュースでもよく取り上げられていたり、カラスは社会問題化していました。

この状況を受けて、今では当たり前のゴミ捨て場の防鳥ネットが導入されたり、平成13年には石原慎太郎都知事が「カラス対策プロジェクトチーム」を結成してカラスの大量虐殺を決行したためカラスの個体数は減少。
さらに、先に述べたようにオオタカが都心に住み着くようになって都会の空がこれまでのような天敵のいない楽園でもなくなったため、23区内のカラス生息数は平成12年から平成32年までの20年間で1/3まで減少しました。

生態系によって勝手に個体数が落ち着いたので、今振り返ると石原のやったことは無駄な殺生でしかありません。
きっと今頃は地獄で津波で我欲を洗い流す刑罰を受けていることでしょう。

クマゼミ

クマゼミは暖かい地域を好むセミで、昭和の頃は神奈川より西にしか生息していなかったそうですが、いつの間にか茨城以南の関東や北陸にも住みつき、元々生息数の多かった西日本でも生息数増加が報告されています。
一方、クマゼミが増えた代わりにアブラゼミやミンミンゼミなど他のセミは数を減らしているんだとか……。

セミ研究者の間では、地球温暖化で気温が上がったため今まで繁殖できなかったような涼しい地域でも住めるようになったからという説と、植樹のときに木に混ざって移動してきた説が提唱されているようです。

クマ

「クマ」ゼミの次は「クマ」です。

最近クマが人や家畜を襲うニュースが増えて世間を騒がせていますね。
クマは生息していないということになっているしょうたの住む九州でも、2010年から熊本県を中心に頻繁に目撃されるようになった「KUMAMON」という個体が、柏木由紀の胸を揉むとか、おねいさんのスカートを覗くとか、色々問題を起こしています。

クマはファンシーな見た目でも怖い生き物であることを再認識させられます。

では、なぜクマによる人身被害が最近増えているのでしょうか?
直接の原因はクマの主食のどんぐりが不作で餌を求めて山を下りたためらしいですが、それだけでなくクマの生息数も近年増えているようです。
戦後の食糧難の時期に行われた乱獲や住宅地開発によって平成初頭日本列島のクマは絶滅の危機に瀕していて、各地で狩猟が禁止されるなど保護政策がとられていましたが、それが功を奏して平成末には絶滅の心配もないほど生息数が回復しました。
こうなったらクマ猟を再開しても問題なさそうですが、環境保護団体からのクレームやハンターの高齢化でそういうわけにもいかず、個体数は増える一方。そのため、人里への出没や人身被害が増えているみたいです。
乱獲は問題だとは思うけど、激減前は人間も熊の捕食者として生態系の一部をなしていたので、増えすぎた個体は適度に狩るべきだと思いますね。
公開 H35-12-31