福岡インディー・ジョーンズ<br>~失われたエレデ博多寿屋空港店~ もどる

福岡インディー・ジョーンズ
~失われたエレデ博多寿屋空港店~

九州人の心のふるさと「寿屋」と8か月で潰れた幻のデパート

いらっしゃいませ こんにちは
あなたの街の寿屋
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あなたの街の寿屋

しょうたが小さいころ、九州には寿屋というスーパーかデパートかよくわからない店がありました。
20世紀生まれの九州人なら全員「いらっしゃいませ こんにちは~」ではじまる寿屋の歌を歌えるぐらい九州ではメジャーなお店だったのですが、2002年のある日、経営悪化によって突如として全店舗一時休業、そのまま九州の会社としては史上最悪の不良債権を残し廃業するという壮絶すぎる最期を迎え、寿屋はなくなってしまいました。あまりにも突然のことで、別れ (=ポイントや商品券を使い切る) を済ませることも叶わなかった人も多かったでしょう……。

一体何が寿屋をそこまで追い詰めたのでしょうか?主犯はゆめタウンとジャスコですが、とどめは自爆でした。
寿屋はエレデ博多寿屋という大きなデパートを福岡市中心部で営業していたのですが再開発のために立ち退かされ、そこで寿屋の偉い人は何を思ったのかエレデを「エレデ博多寿屋空港店」として町はずれに移転させてしまいました。 車でのアクセスが便利なら町はずれでも問題にならなかったと思いますがよりにもよって、福岡空港に続く渋滞の激しい道路沿いに建ててしまったため車でのアクセスも難しく常に閑古鳥が鳴いていたようです。この失敗が致命傷となって寿屋は廃業を決定するとともに、エレデはわずか8か月で消えたデパートとして伝説的な存在になったのです。

そんなエレデの建物は閉店後ホームセンターのナ●コになったのですが、まだ新しかったので (築1年) ほとんど改装もされず、今も店内のあちこちに当時の名残を残したまま営業し、かつて寿屋という店が九州の地に栄えたことを今に伝えています。ピラミッドやコロッセオなど古代文明の遺跡のように……。

失われた平成の超現代文明「寿屋」が眠る地、福岡空港ナ●コ―――
しょうたも男の子なので失われた文明系の話には心を惹かれてしまいます。
というわけで、失われた平成超文明「寿屋」のロストテクノロジーを発掘するためにナ●コ福岡空港店に出かけてきました!

↑晩年の寿屋のロゴマーク。脱力系の顔マークなど平成前半的なセンスが炸裂している。

空港ナ●コに眠るエレデの遺物

※店内を撮影するとナ●コさんの営業の邪魔になるので文字情報のみでお送りします。
他の人に迷惑をかけないのは遺跡探索のマナーです。
守らないとガードマン……もといガーディアンの怒りにふれて遺跡からつまみだされる可能性があります。
地下鉄福岡空港駅から歩くこと5分ほどで、冒険の目的地である寿屋文明が眠る地、ナ●コ福岡空港店、そう、往年のエレデ博多寿屋空港店が見えてきます。 もとがデパートというだけあって、ホームセンターとは思えないような豪華な建物なので目立ちます。福岡空港を利用したことがある人なら着陸の時にその威容を目にしたことがあるはずです。

遺跡に近づくと、中に入る前から寿屋の遺物を見れます。駐車場の入口を表す看板に「エレデ」「寿屋」を塗りつぶした跡がしっかりと浮かび上がっているのです。 寿屋文明の崩壊を恨んだ霊(=寿屋社員)たちの怨念が、かつてここが寿屋であったことを主張するためにその文字を浮かび上がらせているのかもしれません……。実績「古代遺跡にありがちな呪い」を開放。

遺跡の入口にも寿屋の遺物は残っています。玄関の自動ドアに波模様の線が入っているのですが、これはしょうたの家の近所のくらし館 (寿屋系列のスーパー) や、おじいちゃんの家の近くの寿屋にあったものと同じです。寿屋は自動ドアに波模様を入れるのが好きだったのかもしれません。 「縄文土器は厚手でもろく装飾が多い」みたいなノリで「自動ドアのガラスに波模様の線を入れるのが寿屋文明の特徴」とテストに出るので覚えておきましょう。

遺跡の中央部へ行くと材木売り場があります。何の変哲もない材木売り場と思いきやこの部分だけ天井がなく吹き抜けになっています。おそらくもとは北海道展や3流芸人による漫才ショーなどのイベントを開くために作られた吹き抜け広場だったのでしょう。
多くの人で賑わう町の中心ともいうべき場所が今では材木売り場になってしまったことには哀愁を感じずにはいられませんが、天井がないことを利用して2階分の高さがあるような長い材木も置かれてるのでこれはこれで有効活用されている気もします。遺跡で暮らす人々の生活の知恵なのでしょう。


いよいよ遺跡の最深部まで到達しました。そこでしょうたを待っていたのは「エレデ」に関するすべてが書かれた石板でした。

寿屋時代のフロアガイドがそのまま残っている……。

奇跡的に残っていた20年前のフロアガイド。そこには往年のエレデの様子がしっかりと書き残されていました。
在りし日のエレデでは寿屋が食品、化粧品、ファッションなどを売るとともに、サンリオショップやたつみ寿司などのブランド店も入居していたようです。 突然の文明の滅亡に巻き込まれエレデと運命をともにしたテナントのみなさんはとんだ災難だったでしょうね……。
ちなみに予想通り先ほどの材木売り場の吹き抜けは「ふれあい広場」というイベントスペースだったようです。
平成超現代遺跡「空港エレデ」の謎は解明されました!満足したので帰ります。

遺跡内の「ある場所」にある当時のフロアガイドさえ見つかれば謎は解けますが、探せばさらに当時の遺物があるかもしれないので、興味のある方は寿屋のロストテクノロジー探索に福岡空港ナ●コに行かれてはいかがでしょうか?

現代型遺跡という概念

この遺跡探索ごっこ、冗談で始めたつもりがやってみると下手なリアル謎解きゲームよりも面白かったです。謎解きゲームはゲームなのでシナリオに沿って進むだけですが、こっちはわずかに残る当時の遺物から当時の人々の営みに思いを馳せたり、現在の様子をもとに当時の姿を想像したりで、「ごっこ」とは言ったものの、やってることは本物の遺跡探索と同じなんですよね。スケールがショボすぎるだけで。
近年は現状維持や環境保護が重視され遺跡への立ち入り規制がどんどん厳しくなってインディージョーンズのような派手な冒険は難しくなっているようなので、建物の中をうろうろして、かつてそこに入っていた店に思いを馳せるという行為は21世紀型の遺跡探索と呼んでもいい気がします。

21世紀の遺跡探索を楽しみたければ、東京の人は有楽町のビックカメラにそごうを、名古屋の人はエアポートウォークに空港を、関西の人は難波駅に大阪スタヂアムを、広島の人はナタリーに遊園地を、北九州の人はコレットに伊勢丹を、熊本の人は下通ダイエーに大洋デパートを探しに行くのがおすすめです。